激落ちくんを解雇するタイミングがわからない

 最初は真っ白で、おろしたての消しゴムのようだった激落ちくんですが、使っているうちにチビて薄汚れて、何十年も使ったふとんの綿のようにクッタクタになってしぼんでしまいます。

 捨てればいいだろうとおっしゃるかもしれませんが、そこまで使ったころにはこっちにもそれなりに情がうつってるわけですよ。
 とはいえこんなボロボロになってまでこいつを使い続けていいのか、もうマグカップを磨くことに疲れ、いいかげんにしてくれとおれを恨んでやしないのか。田舎においてきた彼女にはもうあわせる顔がない。だって見てくれよ、俺のこの身体……。
 そんなうらみつらみをおさえつけて、あくまで自分の仕事は食器を磨くことだと、それだけが誇りなのだと、最後の最後まで食器をきれいにするんだとおもってくれているのか。いっそのことスパッとお役御免としたほうがよいのか。
 ぼくは、他人の気持ちがよくわからない、他人に気遣いができてない、とたまにマジで反省してへこむ人間です。そんなヤツですからこの手の中の激落ちくんの気持ちもさっぱりわからないので、捨てるべきか捨てざるべきか、なかなか結論がでません。

 左手にマグカップ、右手にチビた激落ちくんを持ってゴシゴシやりながら考えます。右利きだからです。
 とかいってるあいだにとうとうチビた上にまっぷたつに裂けたので捨てました。